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自殺予防対策における連携の意味 業種間の相互乗り入れ [自死(自殺)・不明死、葛藤]



<自死の原因論の誤解とその理由>

自死予防として他業種の連携が必要であると
ようやく言われ出してきたようです。
「自死予防の原因は平均4つあるから
それぞれの分野の専門家が連携する必要ある」
みたいな説明がなされることもあります。

ここはちょっと誤解があるようですから、
説明しておきます。

こういう原因並列論の文脈で語る人たちの中には、
警察の統計に基づいて話をしている場合があります。
ここで誤解というか理解不十分があるわけです。
警察は自殺が起きた場合、捜査をします。
目的は事件性の有無です。
主として殺人事件や傷害致死事件ではないか
という観点で捜査をしなければなりません。

家族や会社の同僚から事情聴取したり、
遺書を読んだりするわけです。
そして死亡の原因を探ります。

そうして、自死であり
他殺ではないということが判断できれば
「事件性なし」という事件処理をします。

自死であるとするためには
自死の原因が必要だということになります。

ここでいう原因は
あらかじめ用意されたカテゴリーの中から選ぶわけですが、
家庭問題、健康問題、経済・生活問題、
勤務問題、男女問題、学校問題、その他、不詳
という9つのカテゴリーの中から選ばれます。

そうすると、
「会社でいじめにあいノルマもきつく、
うつ病にかかったが、
単身赴任のため家庭との折り合いを欠いて」
なんてことになれば、
健康問題、勤務問題、家庭問題が
ぽちっと押されるわけです。

会社の上司を事情聴取して
パワハラはありません
なんて言われると、
ハイそうですかということになるわけです。

上司が殺したり、
自死するよう脅迫したのでなければ
事件性はないわけですから
それ以上警察も突っ込まないわけです。

また、そのカテゴリーの中で
主従も決めません。
該当するカテゴリーは全てチェックします。
チェックしたカテゴリーのすべてが
自死にどの程度関連するかなんてことは
あまり関心がないということになります。

こんな統計をもとに自死の原因は
平均4つあるなんて言うことは
無責任極まりないと言わざるを得ません。

上記事情では、
パワハラとノルマ過多が自死の原因であるべきでしょう。
単純並列切によると
自死の原因は複数あるから
労働だけが原因ではない
だから会社は全部の責任を負わない
なんてことがまかり通ってしまうことになります。

本来自死の原因が複数あるという意味は、
複数の次元から考えなければならないという意味です。
並列的に原因が並ぶわけではありません。

精神科医の松本俊彦先生は
入れ子構造という考え方を紹介しています
(「自殺問題と法的援助」 日本評論社)
いれこという言葉になじみがないのですが
マトリューシカのことです。
人形を開けると中に人形が入っていて
その人形を開けるとまた人形が入っているという
あれです。

また、原因論というよりも
どうすれば自死が防げたかという観点からの考察で、
たとえ、職場でひどい目にあっても
それを同僚が家庭に報告し、
タッグを組んで一人をフォローし、
精神状態によっては、精神療法を受けたり、
法的な解決方法を専門家に相談したり
退職した後の生活方法のレクチャーを受けたり
ということで、
あるべき対処方法を用意して
会社と対決する
ということを言っているわけです。

少なくとも責任論と原因論は分けて
ものを言うべきです。

<具体的なリスク者に対する連携例>
さて、

上記事例で自死が起きたことの責任を追及されるべきは、
会社です。
では、自死する前に具体的に
どのような連携をして自死を予防するのでしょうか。

先ず、弁護士のところに相談に来たとします。
弁護士は、法的手続きが何かできるかどうか
最低限その点について検討するのは当然です。

悩みがあると言うなら
じゃあ、カウンセリング受けてください。
良いところを自力で探してください、
眠れないなら精神科に行ってください。
それじゃあさようなら
というわけにはいかないです。

そもそも、弁護士のところに法律相談に来て
生(なま)の悩みをぶつけてくるというのは、
相当その弁護士は人間味があふれる人のため
信頼される人徳のある人です。
通常は、様子がおかしいということを察知して
こちらから水を向けてみます。

案の定希死念慮などがあれば、
自分の信頼できる精神科医に
事案の詳細を紹介した文書を作成し
そのお医者さんに持っていくように本人に渡します。

様子がおかしいということを見抜く力も必要です。
それ以前に、パワハラや孤立という事情があるならば
おかしくなって当たり前だという人間観が必要なのです。

また、家族などのコミュニティーの共有問題にする
ということを提起して(奥さんに話しなさいとか)、
具体的方法を一緒に考えます。
場合によっては、家族にも来てもらい
具体的な状況と心配のポイントについて説明します。
具体的な対処方法について家族に提起します。

お医者さんに対しては、
これから予想される具体的手続きと
起こりうる葛藤の高まるポイントについて知らせ、
警戒をお願いするわけです。

お医者さんの方から、
治療の必要上、直ちに手続きに入らないで
これこれの期間様子を見れないかとか
手続きを断念できないかという話も来ることがあります。

依頼者が最終的には決めることだとしても
お医者さんからの情報提供をもとに
手続きを進めることについての
メリットデメリットを提起し直して
依頼者が判断しやすいように提供します。

手続きを断念する場合も、
主治医の先生と依頼者を通じて連絡を取り合い、
その後のフォローも行います。

ここから言えることは、
先ず、その人が治療の必要性があるかどうか
という判断をすることになります。
まあ、必要ないという判断はあまりしませんが。
それはお医者さんが判断するべきだからです。

但し、自分が知りえた事情を
依頼者が全てお医者さんに告げるとは限りません。
医学的に見て必要な事項については、
できるだけ漏らさずに紹介状に記載する必要があります。
そのストレスのポイントについては、
実は本人が説明してもなかなかお医者さんに理解できない
事情があります。

一つは、お医者さんは、
会社は良識ある大人の集団だと思い込んでいます。
会社についていけないのは、
本人の人格が未熟だからだと
思い込む傾向があるようです。

お医者さんの元を訪れた段階では
既に精神的に疲弊しきっているため
防御的な反応をしているということを
あまり理解してくれない先生もいます。

だから信頼できるお医者さんを紹介するのですが、
それでも現在の会社や学校の
異様な人間関係については
あまり理解されていないようです。

弁護士はここを補う必要があるわけです。
要するに先入観を持ってもらうのではなく、
先入観を排除してもらうために
紹介状を作成するのです。

ある程度の精神医学的な知識が
どうしても必要になります。

それにもかかわらず、
いまだに、自死やうつのことは
精神科医に任せて弁護士は立ち入らない
という考えの弁護士が大勢います。

しかしその考えでは、
弁護士は通常業務をするだけで、
自死予防の連携には入らないことになります。
今、目の前に、自死を予定している人がいても
そのことはないことにして
通常業務だけをすることになってしまいます。

前述の精神科医松本俊彦先生は、
自死の原因が入れ子構造にあるから
何が必要かというと
それぞれの業種が相互にそれぞれの業種に
相互乗り入れをするべきだという考えを紹介しています。

もちろん、弁護士が一から精神医学を
学ぶということは現実的ではないでしょうし、
あまり効果が上がらないでしょう。
しかし、積極的にいろいろな文献を読んだり、
直接精神科医に教えを乞うということは
とても大切なことだと思います。

一番必要なことは、
その人の状態を見て治療の必要性を考えるというより、
その人の置かれた境遇が
およそ人間にとって精神的に圧迫する境遇か
という洞察の方を鍛えることだと思います。

<一般予防における連携>

我が国の自死予防対策で一番遅れていると思われるのが、
一般的な自死予防の方法論の研究だと思います。
これは、自死予防=精神科治療
という図式に安住していた時期が長かったためです。

うつが自死の原因だとしても
それが増加した要因は、
例えば遺伝的な内因性のうつではなく、
ストレス因によって引き起こされたり
強い影響を受けたうつの増加が原因だったはずです。
そうだとすれば、うつを予防する
という発想がどうしても必要だったはずです。
こういう発想はあまり目にしませんでした。

唯一、過労死、過労自死予防だけが
そのような予防対策だったようにも思えます。

過労死、過労自死予防は、
医師と弁護士が共同研究を行い、
医師によって弁護士が医学的な知識や考え方を学び
訴訟において主張立証をして、
医師は弁護士から労働実態や行動経緯等を知らされ、
最終的には、かなりの相互乗り入れがなされました。

私が力を入れているのは、
家族問題です。
家族問題で自死をする男性がかなり多くいます。

誰かが悪いという視点を外して、
どうすれば、家族が崩壊しないか、
家族の崩壊を招く疾患とは何か
ということが研究されていないように思われるのです。

誰かは研究しているのでしょうが
現在苦しんでいる家族には伝わっていません。

これは理由があると思います。
お医者さんは、身体的疾患の治療をすることで
命を長らえたり、身体的苦痛を解消することに
専念することはもっともなことだからです。

また、当人でさえ
身体的疾患によって、
例えば悲観的な思考傾向に陥っているということに気が付きません。

しかし一定の疾患が、認知の歪みを生じさせ
家族を危殆に至らしめる可能性があるようです。

そういうことを問題提起するのは、
やはり、離婚問題を担当する
弁護士がやらなくてはならないことだと思うのです。

精神問題は医者やカウンセラーが担当するというのでは、
検討が始まりさえしないことも多くあるように思われます。

無理かどうかやってみましょう。
また間違いがあれば、正してもらいましょう。
何もやらないで等閑視しているのでは、
あまりにも情けないと思うのです。

今回は、弁護士と医師、カウンセラーとの連携を
お話ししましたが、
もっともっとそういうことを意識的に行う必要があると
そういう連携をしていくことを
一歩ずつ実現させていきたいと考えています。


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